概要

 結晶性材料の特性はナノ・スケールの結晶欠陥により左右されます.この ようなナノ・スケール結晶欠陥そのものの特性(Defect Properties)を評価し,それらの構造や配列を制御することにより材料の特性向上を図る基礎研究(Defect Engineering)を行っています.

高効率のエネルギー利用 のために
  健全な未来を創造するためには,環境を保全しつつエネルギーをどのようにして確保するかが重要な問題となっています.そのためには既存の熱機関の高効率化 を図るとともに,廃熱利用,高効率蓄電などの技術の実現が有効です.このような技術を実用化レベルに引き上げるには,既存材料よりもはるかに特性に優れた 新しい軽量耐熱材料や,電池材料,熱電変換材料などの環境調和型高機能材料の開発が不可欠です.一般に材料の特性は,材料の結晶構造や内部に含まれるナ ノ・スケールの結晶欠陥により左右されます.私たちの研究室では,金属間化合物というユニークな物質群をターゲットとし,最新の電子顕微鏡法を用いた材料 中のナノ・スケールの結晶欠陥そのものの特性の評価,ならびにマクロ物性との相関の解明を通じて,各種材料の特性向上のための構造設計法の確立を目指して います。
 

図1.JEM-ARM200F 原子分解能分析電子顕微鏡とMg-Al-Gd系LPSO/OD相の超高分解能暗視野STEM像. Gd原子が濃化した原子コラムの規則配列構造が明瞭に確認できる.

 新しい機能 の探索-豊かな可能性を持つ金属間化合物材料
 金属間化合物とは2種類以上の金属または半金属元素から構成され ている化合物です.一般に性質が異なる異種元素同士が強い原子間結合によって結び付けられているため,金属間化合物はその成分金属又は半金属とは著しく異 なったユニークな物性を示します.たとえば図のニッケル(Ni)とアルミニウム(Al)が結合してNiAlという化合物になれば,この化合物は2つの成分 金属の融点をはるかに超える高い融点を持つに至ります.なぜNiAlの融点がこのように高くなるのか,金属間化合物中の電子の性質に注目して研究されてい ますが,まだ十分には理解されていません.金属間化合物の世界にはこのような興味のつきないフロンティアが広大な未開の原野のように広がっています.

図2.金属間化合物の原子構造

耐熱構造材料の研究
 航空機用ジェットエンジンや発電用ガスタービンのエネルギー効率 は,Ni基超合金と呼ばれるタービン翼材の高温強度特性と密接につながっています.つまり,より高温で安定に使用できる材料や,より軽量な材料が開発され ると,確実にエネルギー効率の向上が図れることになり,その結果として,排出CO2の 大幅な削減も見込めます.現在用いられているNi基超合金の高温強度特性は,材料内部の組織形態に強く依存しているため,その高度な制御が材料のパフォー マンスを向上させます.我々は材料の内部組織と高温強度特性の相関について実験と理論の両面から研究し,材料特性の向上を目指しています.
  さらに既存のシステムよりも優れた次世代型システムを創造するためには,そのシステムを支える新しい材料,すなわち,従来のNi基超合金より軽く,より過 酷な雰囲気で使用が可能な軽量耐熱高温材料が必要不可欠です.このような材料の候補に,遷移金属のアルミナイド,シリサイド,ボライドなどの金属間化合物 があります.前節でも述べましたが,異種原子間の強い結合を持った金属間化合物は,その強い結合に由来するさまざまな特性,中でも高温に耐える材料として 大変魅力ある特性を備えています.たとえばNiAlのようにアルミニウムを多く含む高融点化合物は,高温における強さと共に耐酸化性にも優れています.金 属間化合物の中には,温度が上がれば上がる程むしろ強くなり,普通の金属や合金では考えられないような特性を示すものも含まれていますから,金属間化合物 の高温力学物性は大変興味深く,実用的にも重要な研究テーマになっています.

図3.Ni基超合金の微細組織の(a)走査電子顕微鏡 像および(b)フェーズフィールド法によるシミュレーション結果
図4.チタンアルミイド製のスポーツカー用ターボチャー ジャーローターと排気バルブ

高機能エネルギー・環境材料の研究

 金属間化合物は異種原子の組み合わせにより構成されていますか ら,その組み合わせは無限にあるといっても過言ではありません.このため金属間化合物の中には機能材料として優れた特性を示すものも多く,電池材料や熱電 変換材料としてすでに私たちの生活の中でふんだんに活用されている一方,次世代型のリチウム二次電池や燃料電池などの分野での利用が期待される有力な候補 材料も多数存在しています.近い将来,このような新しい材料を使ったシステムを組み合わせることで,自動車のエンジン廃熱,排ガス熱を熱源として電気を生 み出したり,高効率で蓄電することでシステム全体の燃料消費効率を高め,環境への負荷を低減することが期待されています.私たちは,このような環境調和型 高機能金属間化合物のさまざまな機能特性と格子欠陥の関係を,最新の電子顕微鏡法などを用いて様々なスケールから研究しています.

図5.熱電変換クラスレート化合物の走査透過電子顕微 鏡像

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京都大学大学院工学研究科材料工学専攻
結晶物性工学分野 (乾 研究室)
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[研究室は京都大学吉田キャンパス本部構内 工学部物理系校舎南棟6階にあります.]