Kishida Lab

結晶構造・結晶欠陥構造の精密解析

結晶性材料の特性は,結晶構造ならびに結晶内部に含まれる結晶欠陥の影響を強く受けます.したがって,結晶構造ならびに結晶欠陥構造を精確に解析することは,結晶性材料の特性発現機構の理解のために非常に重要です.岸田研では最新の電子顕微鏡法である走査透過電子顕微鏡法を用いた結晶構造ならびに結晶欠陥構造解析を行っています.以下では観察例の一部を示します.

複雑な結晶構造を有する金属間化合物の結晶構造解析
<Mg-Zn-Y系LPSO相の結晶構造解析>
Mg-Zn-Y_LPSO
 左側の3枚は広角散乱環状暗視野(HAADF)-STEM像で,原子コラムが明点として観察されています.HAADF-STEM像では明点の明るさは原子コラムに含まれる原子の平均原子番号に依存するため,これらの図では最も明るい明点の部分に原子番号が最も大きいYが濃化していることが分かります.さらにその配列はMg-Al-Gd系と同様で,希土類元素YとZnがL12型構造と同様の原子配列を持つクラスターを形成していること,さらにそのクラスターが規則正しく配列していることがわかりました.
 右側の環状明視野(ABF)-STEM像では,逆に原子コラムの位置が暗点として観察されますが,L12型クラスターの中心部分に対応する位置に追加の暗点が観察される部分(青矢印)見られる一方で,明確な暗点が見られない部分(赤矢印)も存在することが分かりました.このことからL12型クラスターの中心サイトにはY, Mg,Znのいずれかの原子が含まれるが,含まれる原子の種類や占有率はクラスターにより異なることがわかりました.
[1] K. Kishida et al., Acta Materialia, vol.99, p.228 (2015).
[2] K. Kishida et al., Acta Materialia, vol.59, p.7287 (2011).